子馬の胎便停滞4
ある昼「朝生まれた子馬が腹を痛がっている」と連絡がありました。
私は、いつものとおり、生まれて12時間以内の腹痛はほとんどが胎便停滞なんだよなと思いながら牧場へ向かいました。
子馬は確かにおなかを痛がっています。肛門に指を入れ便を確認するとオレンジ色の粘りのある便でした。
私は「胎便停滞ではないな」
牧場のスタッフが「生まれたすぐにはなかったような気がするのですが、ヘソが出た(でべそ)ような…」と言いました。
触ってみると、確かにゴルフボール大の臍が出ています。押し込もうとしましたが無理でした。
「ヘソの袋に腸が入り込んでいます。腹に戻らないので、この部分で腸閉塞になっています。」と伝えました。すぐに2次診療施設に連絡をとり、緊急手術で事なきを得ました。
腸がヘソに入り込んで時間が経てば、そこで腸は壊死(死んでしまう)します。そうなってからでは子馬の生命も危うくなるのです。
このように生まれてすぐの腹痛はほとんどが胎便停滞であるといいながら、すべてではありません。私たち獣医師は先入観に捉われることなく、常に神経を研ぎ澄まして診断をしなくてはなりません。