馬鼻肺炎
すでに鼻肺炎ウイルスによる流産が発生していると聞いています。
ご存じのように鼻肺炎ウイルスはヘルペスウイルスが起こす病気で、人では帯状疱疹や、みずぼうそうを起こすのと同じ仲間です。
馬媾疹(うまこうしん)もヘルペスウイルスですが、こちらは人の性器ヘルペスや口唇ヘルペスと同じ仲間になります。これは接触により感染するので、馬の外陰部に水ぶくれができて馬媾疹が疑われた場合には治るまで交配はできません。思えば昔はよく発生していたような気がしますが最近はあまり見なくなりました。昔に比べ衛生管理がしっかりされているのですね。
本題は馬鼻肺炎ウイルスでした。
競馬場でもこのウイルスが動いているとされ、ときに発症することがあります。競走馬の症状は鼻水、咳といった風邪症状です。このためJRAでは定期的に馬鼻肺炎ワクチンをしています。
牧場にいる1歳馬と上がり馬が同居した場合、上がり馬がうつすことがあります。免疫がない1歳馬は感染すると風邪症状を示し、たくさんのウイルスをまき散らし、ついには繁殖馬に感染させてしまうことがあります。
繁殖馬の多くはすでにウイルスを体にもっています。このウイルスは神経の節に潜んでいます。普段、ウイルスはおとなしくしているのですが、体の外からたくさんのウイルスを浴びたり、免疫力が下がったりすると活性化して体中を駆け巡ります。
多くの繁殖馬自身は少しの鼻水を出す程度ですが、胎盤から胎児にウイルスが入ると胎児が死亡したり生まれても虚弱で助からない状態になります。
免疫が下がる主な原因は、寒暖差です。これからの時期の受胎馬の夜間放牧は、免疫力低下に大きく影響します。次に、群の再編成です。仲間が変わると2週間は免疫が下がります。もし分娩前に移動する必要があるなら少なくとも分娩予定の1か月前にはしたほうがいいでしょう。
馬鼻肺炎に限らず、繁殖馬の免疫が下がると一見正常に生まれた子馬でも病気に対する抵抗力が下がってしまうことがあります。仮に初乳免疫が高くとも病気のしやすい子馬になってしまいます。