臍帯捻転
夕方に、来年の2月に分娩予定の母馬が疝痛と連絡がありました。
この時期の「疝痛」の診断は難しいです。
それは、腸の異常だけでなく流産の兆候のことがあるからです。
体温の上昇はなく、心拍数は若干早い、腸の動きはやや弱く、
腹囲はやや張っているように見えます。
外陰部から悪露が出たり、羊水のにおいはしません。
流産する馬は、時に馬房内に羊水のにおいがすることがあります。
また外陰部がやや緩んでいたり紅潮していれば流産の可能性を疑います。
今日の馬はそのようなにおいはしませんでした。
しかし、この時期の母馬のお腹をよく見ていると胎児の動きがわかることが多いのですが、それは見られませんでした。
クエン酸モサプリド5㎎錠を100錠経口投与し、バナミンを通常量の半分を注射しました。
バナミンは疝痛を緩和しますが、副作用で胎盤にいく酸素の量を減らしてしまいます。
そこで私は少し少なめの量を注射することが多いです。
そうすると15分程度で落ち着いたので様子を見ることにしました。
ところが夜中の12時を過ぎたころに流産をしました(写真1)。
胎児はすでに死亡し、胎盤もやや変色していました。
そして写真のように胎児とつながる臍帯はぐるぐると捻じれていました。
臍帯の長さを測ると85センチありました。通常は60センチ程度が最長なので85センチはかなり長いと言えます。それだけ長いと子宮内で胎児の可動域が大きくなり捻転するリスクが大きくなると言われています。
おそらく、この胎児も臍が捻じれたことで虚血となり死亡したことが流産の原因になったものと思われました。
胎児と胎盤は家畜保健所で検査をしてもらったところ馬鼻肺炎ウイルスは陰性でした。