馬の歯のメンテナンス

多くの顧客の方から毎年12月から2月上旬に、明け1歳馬の歯のメンテナンスを依頼されるようになりました。

私が獣医師になりたての頃には生産地で歯をメンテナンスするという考えはなかったように思います。

高齢の繁殖馬がひどい食べこぼしをしたり、食欲がなくなって歯を見るとひどく尖っていて、それが口の粘膜にあたり潰瘍になっていたり、歯の手前から後ろにかけて(前臼歯から後臼歯にかけて)スタンディングオベーションのごとく波打っていたり、歯が抜けて虫歯になっていたりなどひどいものだったと記憶しています。

しかし、前述のようにこのような状況になるのは高齢の繁殖馬であって、競馬場へ行く前の当歳馬や1歳馬を見ることはほとんどありませんでした。

ところが、15年ほど前よりいろいろなセミナーで歯のメンテナンスの重要性を聞き積極的に歯を見るようになりました。すると今時期の明け1才馬のほぼすべてで歯(臼歯)が尖っているのです。

なぜでしょう?

もともと馬は上顎が下顎に比べ大きく、食べるときに草などを奥歯(臼歯)で臼を回すようにすりつぶして細かくしています。そのため上の歯は外側、下の歯は内側が尖っていきます。ひどい場合は、私が確認のため口に手を入れるとナイフのように尖った歯で指を切ってしまうことがあります。最近は、与える配合飼料の量が昔に比べ格段に増えていることも歯が尖る一因とされています。

それでも食欲が落ちることはあまりありません。人ならちょこっと歯で口の粘膜や舌を嚙んだだけで痛みで食欲がなくなることもあるのに…

このようなことから歯のメンテナンスは当歳の12月から明け1才の2月までの間の症状がないうちにやっておく必要があると思っています。

メンテナンスをすると間違いなく消化の効率があがり、同じ量を食べたとしても肉付きや毛づやが変わってきます。

余談ですが、歯やすりはとても進歩しています。ずっと昔は手で動かす歯やすりのみしかなくとても大変でした。その後、輸入の電動歯やすりを購入し楽にはなったのですが重く大きく奥歯をきれいに整えることができませんでした。現在の電動歯やすり(写真2枚 これを着て歯を整えます。気分はゴーストバスターズ!)は軽く、小さく、的確に歯を整えることができるようになりました。明け1才なら10分程度できれいに整えられるので本当に助かっています。

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