現役獣医師が解説! 微生物の歴史について知っていますか?
こんにちは、ひだかC.L.Cの獣医師 タケダです。
全世界に新型コロナウイルスという伝染病が蔓延しています。
そもそも伝染病とは何でしょうか??
伝染病とは微生物が原因となる病気です。そこで、微生物(ウイルス、細菌、原虫、真菌)学の歴史から学んでいこうと思います。
ということで、今回は微生物学の歴史パート①です。
微生物学の歴史
微生物学の発展の歴史は、伝染病の流行の機序の解明とその予防という面から始まりました。
伝染病の概念がない時代には、伝染病の流行に対してどのように考えたでしょうか。「これは〇〇のせいにちがいない!」、「いや、○○が原因だろう!」といったように、多くの仮説が立てられました。
古代、病気は「神が人間に下した罰」として、神罰説が信じられていました。
しかし、罰を受けるはずのない階級の人たちがかかったり、国境を越えて蔓延したりして、神罰説が疑問視されました。
それ以後は、以下のような歴史の変遷を辿ります。
- 紀元前5世紀 ヒポクラテスが地震や洪水といった天災の後に疫病が多発するのは地震や洪水で空気が汚れたせいという「ミアズマ説」を唱える
- 14-15世紀 ヨーロッパで天然痘、ペスト、発疹チフスなどが大流行
- 16世紀 コロンブスらがアメリカ大陸から持ち帰った梅毒が全世界に蔓延し、逆にアメリカ大陸へ天然痘が持ち込まれ、蔓延
微生物学における転機
このような病気の発生状況が知られるようになると、病気を媒介する何かがあるのではないかと、考える人がでてきました。
イタリアの医師フラカストロは、牛同士の感染(口蹄疫?牛疫?)を観察して病気を起こす元になるものがあるに違いないと考え、これを「コンタギオン=生きた伝染物」と名付けました。そして病気の伝播様式には
①直接の接触によるもの
②衣類などの媒介物を介する
③空気を介するもの
の3種類があると報告しました。
現在、この報告はほぼ正解であることがわかっています。しかし、当時は微生物の存在が知られていなかったので「ミアズマ説」を否定するに至りませんでした。
その後、レーウェンフックが今日われわれのいう原虫、酵母、細菌などをスケッチしたことで「コンタギオン説」を支持する有力な証拠となりました。彼は学者ではなく、オランダの一市民でありましたが、レンズを磨き266倍の顕微鏡を作り、身近なものを手あたり次第に観察して人類に肉眼では見えない微生物の世界を開きました。
事象を注意深く観察し、論理的に考え、記録することは、現在では医学のみならずあらゆる分野で重要なことだと認識されています。
次回は、微生物学の歴史パート②です。
※参考資料:獣医微生物学 (監修:見上彪)
函館市出身。中学から大学までサッカー部所属。趣味の旅行と美味しいご飯を食べるために、大学時代には毎朝農家バイトで汗を流す。獣医師となった今は、農家さんの直面する問題を解決するのが生きがい。
今年から子牛の免疫を研究テーマとして酪農学園大学研究生となった。
日常の診療等はBOKUJOBでのインタビューをご覧ください。